広い教養と高い専門性をもつ教育者を育てます。
教育学部長・教育学研究科長
宮岡 邦任
教育学部の建物の脇には「ミネルバのフクロウ」と題されたレリーフがあります。ローマ神話の女神であるミネルバは知恵の神であり、フクロウはその使者とされています。このレリーフは、今から約100年前に教育学部の前身である三重県師範学校の玄関に飾られていたものを移設したものです。弁証法で有名な哲学者ヘーゲルは「ミネルバのフクロウは黄昏に飛び立つ」という言葉を残しています。フクロウは黄昏時から活動を始めますが、人々の1日のあり様をつぶさに見つめ、その様子をミネルバに報告していたのでしょう。100年近く前の先輩たちも、新しい時代の到来に向け、いまの時代をしっかり見つめ、課題を共有し、解決に向けて努力をしてきました。その思いを形にしたものが「ミネルバのフクロウ」なのです。教育の場にデジタルの波が押し寄せ、学校が大きく変わりました。この変化をしっかり見つめ、自ら課題を解決し、新しい時代を牽引しようという熱い思いを持ったみなさんを教育学部は歓迎します。教育学部では多様な入試の一環として平成30年度からは三重県南部地域を対象とした地域推薦入試、令和3年度からは三重県全域を対象とした地域推薦入試も開始しています。
さて、教育学部で学ぶ内容は自動車のタイヤに似ています。自動車には4つのタイヤがついていて、どのタイヤが欠けていてもうまく走れません。また車軸が曲がっていてもだめです。教育学部では、教職の意義や教員の役割、子どもの発達の様子や生徒指導などに関する教職関連科目と、国語や社会、音楽といった教科の内容に関する科目(教科専門科目)という大きな柱が2つあります。これは車の前輪と後輪のような関係で、どちらも欠くことができません。さらに教職でも教科でも「知識として知っている」ことと「それを上手く教える」ことは違います。理論と実践の2つがかみ合ってこそ車はまっすぐ進むのです。本学部では、教科や教職に関する高い専門的知識を身につけるための教育環境を整備・充実させるとともに、人文・社会科学、自然科学、芸術、体育などに関する幅広い教員を配置しています。また、問題解決力の向上を目的としてPBL(Problem Based Learning:問題解決型学習)の手法を取り入れた授業を実施するとともに、1年生の段階から近隣の幼小中学校での授業見学や授業支援を通じて、学校での子どもたちの姿に触れる機会を設けています。さらに、教育・研究・実践の実験校として4つの附属学校園(幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校)と附属教職支援センターがあり、みなさんの教員への道を支援します。
社会の変化のスピードはどんどん速くなり、将来を見通すことが難しい時代になってきています。子どもたちはこのような時代を生きていくことになりますので、自ら考え・判断し・実行していく力を培っていく必要があります。教師の仕事は、子どもたちの人生にも関わるものであり、やりがいとともに責任を伴うものでもあります。社会や教育の現場は日々変化していますので、情報のアンテナを高くし、自ら学び、成長し続けることが必要となるのです。 教育の効果は形には見えにくいものですが、その効果は10年後、30年後、50年後に明らかな形として現れてきます。教育は未来を創る仕事です。一緒に未来を創っていきましょう。本教育学部は、みなさんが未来を創る人材となる、そのためのサポートを全力で行っていきます。